DS、ハイドロ沼のほとりにて
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- 日記
「クルマには二種類ある。シトロエンDSとそれ以外だ。」
それほどにDSは特異性に満ちたクルマです。
いや、もはやクルマという範疇にも属さない孤高の乗り物、と言っても過言ではありません。
それを物語る衝撃のエピソードをご紹介しましょう。
…今を遡ること64年前、フランスはパリのお話。
快晴のその日、エッフェル塔の周囲を飛び回る未確認飛行物体が、多くのパリジャン、パリジェンヌによって目撃されたのです。
しばらくすると、飛行物体は、ゆっくり地上に降りてきました。
それは、見ようによっては地上で言うところの自動車にも似ていますが、あまりに奇天烈なカタチだったのです。
人々が固唾をのんで見守る中、飛行物体からフラミニオ星人が出てきました。
「おぉっ!」群衆は、一斉にどよめきました。
星人は、それに応えるように言葉を発しました。「◎△※∃」
「おぉっ!」群衆は、再びどよめきました。
星人は、謎の言葉「◎△※∃」を繰り返しながら、軟体動物のようにデロンデロンと体をくねらせています。
顔は少し笑っているようにも見えます。
「誰か宇宙語のわかるヤツはいないのか?」群衆の一人が叫びました。
しーんっ…。答える者は誰一人としていません。
が、一瞬の間をおいて、沈黙を破る声が凛として響き渡ります。
「私はわかるわ!」
群衆は、一斉にその声の方に振り向きました。
そこには、まだ年端もゆかぬおさげ髪の少女が立っていたのです。
少女はたった今、絵画世界から抜け出してきたかのような、そんな不思議な雰囲気を持っていました。
「君は宇宙語を理解できるのかい?」長身の男が少女に近づいて尋ねました。
「ええ、おばあちゃんに習ったから。」
「そうか。名前は?」
「人に名前を聞く時は、まず自分から名乗らなきゃ。」
「これは失礼。私はド・ゴールって言う者だ。」
「私はジャンヌって言うの。」
「ジャンヌか。いい名前だ。で、フラミニオ星人は何と言ってるのか、わかるかい?」
少女は、宇宙人のように声をビブラートさせながら答えました。
「この乗り物はシトロエンDSって名前なのだ、そう言ってるわ。」
「おぉっ!」群衆は、三度どよめいたのです。
宇宙船シトロエンDSは、こうして地上に舞い降りたのでした。
(『シトに歴史あり ド・ゴール回顧録』より)
シトロエンDSが、しばしば “宇宙船” とか “空飛ぶ魔法の絨毯” と形容されるのは、こんなエピソードに由来していたのです。(???)
実際、DSの乗り味は、タイヤが接地しているにも拘らず、まるで地上1mを滑空しているかのようです。
足のない幽霊に乗せられて、スーッと移動して行く摩訶不思議な浮遊感。
あるいは幽体離脱感。
それを可能にしたのが、オイルと窒素からなるハイドロニューマチックサスペンションでした。
ハイドロの乗り味(乗り心地ではない)は、他のどのクルマにも似ておらず、しかし、これにはまると、もう他では満足できないカラダになってしまうのです。
ここから “ハイドロ沼にはまる” という諺が生まれました。
なお、類義語として “蛇の毒にやられる” があります。
そんなシトロエンDSが多数生息すると言う西の聖地を訪ねました。
こんなところにショップがあるのだろうか?と思うような住宅街を抜けて行くと、突如発見、DSの群れ!
私の好きな後期型のキャッツアイから、
前期型のフロッグアイまでDSのオンパレード。
ここは、地獄か天国か、はたまた、夢と魔法の王国=DSランドなのか?
DS以外にもヘンタイ感溢れるシトロエンたちが、Here,There and Everywhere 。
思わずテンション、上がります。
こちらの個体、レストアベースかと思いきや、このままの雰囲気で乗りたいお客さんのDSだとか。
なかなかの強者ぶりです。
ブルーとホワイトのコンビネーションが綺麗なこちらの個体は、レア物の1968年式キャッツアイ。
60年代が思い描いた未来をカタチにしたインパネは、今見ると、なんともレトロフューチャーな雰囲気です。
ちなみに、こちらが70年以降のインパネ。
樹脂化が進み、現代的なデザインに変わりました。
フツーを嫌い、他所がやらない風変わりなことをやる。
よく言えば独創、ありていに言えばヘンタイ。
唯我独尊のクルマづくりDNAは、21世紀のシトロエンにも受け継がれていますが、純度の高さ・味の濃さにおいて、元祖DSは圧倒的です。
実車を目の前にすると、一気にハイドロ沼に飛び込みたくなる。
抗い難い衝動に駆られるのです。
さて、今年のオートモビルカウンシル、巻頭イメージをDSが飾っています。
これはもう見に行くしかないでしょう。
COMMENT
買って悩むか?買わずに悩むか?
同じ悩むなら買って悩め!!!
っていう先人の教えもあることだし、もうこれは買うしかないですね〜
先人、なるほど、ごもっともですね。
しかし、先人ではなく、変人の教えとも言えますね。
DS60周年記念イベント
https://www.youtube.com/watch?v=niKCToV-mb8