家か車か、キャンピングカー?

もう40年も前になるが、勝新太郎監督・主演の『警視K』という伝説の刑事ドラマがあった。

全編ほぼアドリブ、テストなしの本番テイクのみと言った意欲溢れる実験作だった。

しかし、リアリズムに拘るあまり、セリフが聞き取れない、会話が意味不明、カメラ前に役者が被って顔が見えない…などのクレームが続出し、視聴率は急降下。

結局、途中で打ち切りになってしまった。

ある意味、時代を先駆け過ぎたのだろう。

ただ、私はこの自由奔放な刑事ドラマが大好きで、毎週の放送を楽しみにしていたし、数年前にDVD化された時には、思わず大人買いをしてしまったほどである。

飄々としてどこか惚けたカツシン=警視Kが醸し出す雰囲気は、『ロンググッドバイ』で独特のフィリップ・マーロウを演じたエリオット・グールドにも通じるものがあり、実に味わい深い。

さて、ドラマには毎回、ダッジ製巨大キャンピングカーが登場する。

主人公=警視Kが娘と二人で暮らす“家”である。

京王井の頭線神泉駅前の駐車場5台分に、キャンピングカーとサバンナRX7を停め、そこを根城にしている。

警察官、しかも警視でありながら、住所不定?

そもそも当時でも1,000万円以上したキャンピングカーに、5台分の月極駐車場代ともなれば、相当の支出である。

警官の給料でさぞ大変だろうとツッコミたくなるが、そんな違和感も含めファンタジーとして楽しめた。

非番ともなれば、警視K自ら料理をし、娘に振る舞うのだが、その内容は、おみおつけと納豆、そして謎の卵焼きと言った具合である。

1980年代、キャンピングカー黎明期の不思議なライフスタイルが、このドラマに描かれていた。

…と前置きが長くなったが、話題は、キャンピングカー。

先週、幕張のジャパンキャンピングカーショーに行ってみた。

キャンプをやるわけでもなく、特別アウトドアに興味があるわけでもないのだが、八ヶ岳ライフを始めて以来、自然、そちらの領域にも目が向いてしまう。

『警視K』に登場したような海外製フルコンバージョンやバンコンバージョンは、キッチン・トイレ・シャワーを完備したゴージャス仕様で、何と言っても花形だし、

エアストリームなどのキャンピングトレーラーは、カッコいいし、見ているだけでワクワクさせてくれる。

が、とにかくデカい!

“家”にする発想はありだけど、国内でモビリティーとして使うのは、ハードルが高そうだ。

かつ、お値段も4桁万円と非常に高価で、飽くまでもスペシャルな領域だろう。

キャンピングカーで最もメジャーなタイプが、ハイエースをベースにしたバンコンバージョン。

こちらは、“家”ではなく“家風”のモビリティーだ。

テイストや機能、装備など架装メーカーにより多彩なバリエーションが存在する。

カントリーテイストなタイプから、

モダンな都市型テイストまで。

ハイエースサイズにキッチン(シンク、冷蔵庫、コンロ)やベッドがうまくパッケージングされている。

ハイエースにも色々なサイズがあるけれど、都会を走る日常使いを考慮すれば、全長5m以下、全幅1.9m以下がMAXではないだろうか?

価格については、造作の度合いで変わってくる。

500〜600万円台が多く、高い物では700〜800万台にもなる。

サイズ感で言うと、ハイエースより一回り小さいライトエーストラックをベースにしたキャブコンに好感が持てた。

コンパクトなボディにキッチン、ベッドなど一通りが装備されている。

江戸時代以来、日本人のコンパクトにまとめる能力は非常に優れているのだ。

価格的にも400万円前後と値頃感がある。

こちらもライトエースベースのキャブコン。

普通に乗り易いサイズでありながら、必要最低限の装備を備えているので、これで十分と思わせてくれる。

一口にキャンピングカーと言っても、フルコン、バンコン、キャブコン、トレーラーなど多岐にわたっているし、目的や人数によってどのタイプを選ぶかは異なってくる。

一方、“家”ではなく“クルマ”として使う場合、一年で何日稼働させられるのか?と言う話もある。

キャンピングカーを使ってキャンプもしたいし、車中泊で旅行をしたいと思う人は潜在的に多いと思うが、じゃあ、専用で1台所有するか?と問われれば、現実的には簡単にイエス!とは言えない。

そんな時には、シェアカーと言う手もあるだろうし、そうしたサービスを提供する企業もあるようだ。

まずは、とりあえずシェアカーなりレンタカーなりで試してみるのが賢明と言えそうである。

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PROFILE

石川 孝太郎

八ヶ岳ガレージハウスオーナー。1960年、愛知県豊橋市生まれ。現在、愛知県名古屋市と山梨県北杜市の二重生活を送っている。妻、娘、息子の四人家族。血液型O型。好きな食べ物は、カレーなど子供の好きな物全般。好きなクルマは、音の良いアルファロメオ、乗り味が変態なシトロエンなど。晴れた日には、そんなクルマに乗って巨大仏を見に行きたいと願う。機能性より見た目、合理性より無駄、近道より寄り道、抹茶よりバニラ、粒あんよりこしあん。欲しい超能力はサイコキネシス。面白くなければ〇〇じゃない。…など若干の片寄りはありますが、根はいたって常識的な日本人です。

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