C6との邂逅
コメント 2件
- 日記
縁あってシトロエンC6。
淡いブルーを帯びた Gris Fer 。鉄灰色とでも言うのだろうか。
この色合いは如何にもフランス車で、独特の風情を醸し出している。
光量、光の向きで表情が変わるカラー。
それだけでも3分は語れてしまう。
10年親しんだC5は、そのスタイリングがドイツ車的と言われたが、C6は紛うことなきフランス車である。
C6が2005年、C5が2007年デビューだから、2年ほどの隔たりしかないが、デザインの方向性はまるで違う。
C6はフランスローカル、C5はドイツ車に倣いグローバル。
フランス人のためのフランス料理と、外国人のためのフランス料理。
濃厚な味は、当然、前者となる。
4.9mの堂々たる体躯を持つC6。
フロントオーバーハングが異様に長く、リアオーバーハングが極端に短い、奇妙な味わいのカッコ良さ。
不協和音を感じさせるデザインだが、明らかに確信犯。
いずれにせよ全長が5mに迫ると、プロポーションは伸びやかで、デザインの自由度も増してくる。
〈5mの法則〉がこのスタイルに生きている。
アーチを描くルーフラインとサイドライン。
その先に、グサリと突き刺さった円月輪(忍者の武器)のごときリアランプ。
左右に配された縦型ヘッドライト。
魚類を思わせる顔つきはユーモラスであり、威圧感を感じさせない。
フラッグシップであっても威張り方向に振らないところが、フランス流なのだろう。
注目すべきは、リアの造形。
逆Rを描いて緩やかに凹んだリアウインドー。何故に?
トランクフードを開けたら当たってしまうのではないかと心配になるが、勿論、そんなことはあるはずもなく。
流石にそのあたりは、シトロエンと雖も計算済みだろう。
他の誰にも似ておらず、とにかくフツーじゃない。
特に好きなディテールは、ホイールのセンターキャップと、
ドアポケット
デザインだけでも突っ込みどころ満載のC6。
スタイリングで30分は語れてしまう。
前置きが長くなった。
いよいよ乗ってみる。
最初の一転がりだけで、ついつい口元が緩んでしまう。
路面のうねりを波に変え、洋上をゆるゆると進んで行くかのような独特の乗り味は、ハイドロ足のなせる秘技。
しっとり&どんぶらこ。えも言われぬ恍惚感がある。
爆速スピードキングは世の中に数あれど、乗り味で高揚感を生み出すクルマは稀である。
加速の神が神経を昂ぶらせるドーパミンだとすれば、乗り味の神は神経を鎮静化させるエンドルフィン。
C6はけして速いクルマではない。
が、移動時間は速い。と言うか、移動時間が短い。
例えば、500kmの距離を時速100kmで移動したら5時間かかるが、これに変数Tをかけてみる。
ハイドロシトロエンの場合、変数Tは大体0.5〜0.6くらいなので、移動の体感時間は2時間半から3時間程度。
ドライブして気づくと、もう目的地に到着してしまつた、といった塩梅で、非常に楽である。
だから、地の果てまでも走って行ける。
速さは、足で稼ぐ。シトロエンの面目躍如だろう。
ちなみに我が家のジュリアの場合、500kmを5時間で走った場合、7〜8時間走った疲労感がある。
時間は、絶対的ではなく、相対的なのだ。
ひとつ付け加えるなら、同じハイドラクティブⅢプラスを搭載したC5とは、乗り味がかなり違う。
これには正直驚いた。
C6のハイドロ度は、C5の3割増し。ハイドロ特盛り仕様なのである。
揺れ方はより大きく、そして、緻密。
C5にはない、電子制御アクティブダンピングなる機構が、その揺れを演出しているようだ。
ハイドロに魅了される人たちは、この揺れにすっかり参ってしまう。
そして、私もまんまとC6の虜になったのだ。
…と言った風に、ハイドロの走りについては3時間は語れてしまう。
さて、梅雨の合間の八ヶ岳。
エアコンを止めて、窓を開けて走れば、爽やかな風が肌に心地良い。
どうぞ初夏の八ヶ岳へ。
COMMENT
おお〜C6!良いですね〜
ワタクシもこのリアウィンドウが大好きです。これは空力の為であり、シトロエンCXへのオマージュだと思いますっ!
次期快足クルーザーはこれですか〜?
リアウインドウ、走る後ろ姿もリアランプと相まってとても個性的です。
C6は、CXへのオマージュな部分が確かにありますね。
2005年当時は、シトロエンルネッサンスの時代で、デザインも復古調でしたが、それに続くC5やC4は、グローバルを意識して、少し味が薄まってしまいました。
その分、フツーの人でも抵抗なかったのですが、やはりヘンタイの楽しさを知ると、C6が純度が高く、素敵ですね。
数年前にC6もC5も生産は終わっており、最新のハイドロに乗ろうと思えば、この2台しか選択肢がなくなりました。