閉ざされた雪の山荘で
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- 日記
グレゴール・ザムザは、朝起きると、一匹の毒虫になっていたが、私の場合、朝起きると、そこは一面の銀世界だったと言うのが一つの理想形である。
雪無し県出身者の反動で、雪が降ると条件反射的に嬉しくなる。
つまり、これは海無し県の山梨でマグロの消費量が多いと言う事実に等しい。
無いものねだりの人間心理なのだろう。
それにしてもなかなかの降りっぷりである。
気風が良い。
昨日までの風景が、一夜にして見事に『変身』してしまった。
今年はとにかく暖冬で、1月、2月はほとんど雪が降らなかったが、3月になって数回降った。
同様に暖冬だった昨シーズンと似たパターンである。
が、春の雪だから、さほどに寒くない。
降るだけ降ったら、早々に溶けてしまうに違いない。
天然の吸音材が、周囲から音を奪い、静寂が訪れた。
時折、屋根から滑り落ちる雪の音が聞こえる。
あるいは、遠くからクルマの走行音が聞こえるが、それは雪を踏み締める籠った音ではなく、雨の日にしぶきを上げて走り去る音のようだ。
せっかくなので、スキー場にでも行ってみようかと一瞬考えたのだが、2週間ほど前に蓼科の雪道でスタックしかけたことが頭を過り、思い止まった。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」と言うが、「君子危うきに近寄らず」とも言う。
今日は後者の気分だし、世の中的にも家から出ないのが正しい選択肢だろう。
外に出しっぱなしだったクルマの雪を掻き落とし、ガレージに収め、
ストーブに火を点ける。
読みかけのミステリーなら売るほどある。
こんな日は、イマジネーションの世界に浸るのも悪くはない。
閉ざされた雪の山荘。
雪はまだまだ止みそうにない。
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